BCIとは何ですか|ひとことで

BCI(ブレイン・コンピューター・インターフェース)は、脳と機械を直接つなぐ技術の総称です。AMED(日本医療研究開発機構)のサイトに掲載されている「ブレインコンピュータインターフェースシステムの開発ガイダンス」(AMED の事業で2026年3月までに策定)は、BCI を「脳とコンピュータとの間で情報をやり取りすることにより、制御対象ユニットを制御したり脳に感覚情報を入力したりして、身体機能の一部を補完、回復、ないし強化する技術」と説明し、「ブレインマシンインターフェイス(BMI)と呼ばれることもある」と書いています(AMED 掲載の開発ガイダンス)。

産総研の連載記事は、BCI を「事故や疾患などによって身体を動かすことが難しくなった方の脳活動を計測・解析し、その情報を用いて機器を操作する『脳機能代替技術』」と説明しています。実際に手を動かさなくても、手を動かす「想像」をするだけで脳活動が生じます。BCI はこの脳活動をリアルタイムに解析して利用者の意図を読み取り、手にまひのある方のロボットハンドの操作や、全身の筋肉が衰えてしまう病気の方のパソコンを介した意思伝達などを実現する、という説明です(産総研マガジン、2026年7月2日。日刊工業新聞社の許諾を得て掲載された連載記事)。

国の研究プロジェクトも、ほぼ同じ意味で説明しています。内閣府のムーンショット型研究開発事業の研究プロジェクトは、公開した資料で、ブレインマシンインターフェースを「脳情報を利用することで、脳(ブレイン)と機械(マシン)を直接つなぐ技術(インターフェース)の総称」としています(ATR・アラヤ・慶應義塾大学、2022年10月14日)。

たとえば、手足を動かせない人が頭の中で「手を動かす」と念じると、その時の脳の信号を機械が読み取り、パソコンやロボットを動かします。リハビリでは逆に、機械が手を動かして「動いた」という感覚を脳に返す使い方もあります。

見方中身
何をつなぐか脳の活動(脳波・血流の変化・神経細胞の電気信号など)と、パソコン・ロボット・電動装具などの機械
どう使うか脳の信号を読んで機械を動かす。機械の動きや刺激を脳に返す
誰のためか麻痺や ALS のある人の意思伝達・リハビリ(医療)。ゲームや健康管理などの一般向けにも広がっている

表は、上の AMED・産総研・ATR の説明と、日本総研「ブレインテック最新動向2026」の整理を編集部がまとめたものです。

この記事は、脳の技術の仕事を探している方に向けて、「BCI とは何ですか」「BMI と BCI の違い」「BCI の実用化はどこまで進んだか」「日本の BCI の状況」の順に説明します。数字や出来事は、公式の発表や国の資料を開いて確かめたものだけを書きました。

BMIとBCIの違いは?体格指数のBMIとは別

結論から書くと、BMI と BCI は同じ技術を指す言葉で、技術としての違いはありません。AMED の開発ガイダンスは、BCI を「ブレインマシンインターフェイス(BMI)と呼ばれることもある」と書いています。産総研の連載記事も「BCI、ブレイン・マシン・インターフェース:BMIとも呼ばれる」と並べています。LIFESCAPES の解説も、「ブレイン・マシン・インターフェース(Brain-Machine Interface、BMI)やブレイン・コンピュータ・インターフェース(Brain-Computer Interface)といわれる技術」と並べて書いています(LIFESCAPES のコラム)。違いは、どちらの言い方を使う資料が多いか、という書き手の好みです。

略語もとの言葉この記事で確かめた、主に使っている資料
BCIBrain-Computer Interface(ブレイン・コンピューター・インターフェース)AMED 掲載の開発ガイダンス、産総研、日本総研の報告書、JiMED、米国の会社の話(AMED、日本総研の報告書)
BMIBrain-Machine Interface(ブレイン・マシン・インターフェース)内閣府・文科省の研究開発構想、ムーンショットの研究プロジェクト、大学の研究、LIFESCAPES・アラヤなど(内閣府・文科省の構想)

右の列は、この記事で開いた資料での表記の編集部の整理です。日本全体の使われ方の統計ではありません。

体格指数の BMI とは別のものです

検索すると、BMI は体格指数(肥満度の目安)として多く出てきます。このサイトでは、脳と機械をつなぐ技術を「BCI」と書き、国の資料や大学・会社の固有の言い方を引用するときだけ、BMI のまま書きます。BCI も別の意味の略語と重なることがあるので、迷ったときは「BCI 脳」や「ブレイン・コンピューター・インターフェース」で調べてください。

もう一つ、似た言葉に「ブレインテック」があります。日本総研は、ブレインテックを「脳科学・神経科学の知見とテクノロジーを組み合わせた技術やサービスの総称」とし、ニューロテックやニューロテクノロジーとも呼ばれると説明しています。専用の装置で脳活動を計測し、データをアルゴリズムで解析してアプリケーションや製品に応用する、という流れです。同じ資料の図は、BCI をその応用の一つに、ニューロフィードバック、ニューロモジュレーション、ニューロマーケティングを並べて示しています(日本総研、2026年4月9日)。つまり、BCI はブレインテック(ニューロテック)の中心にある技術の一つです。全体像はブレインテック・ニューロテックとはにまとめました。

仕組み|脳の信号を読み、機械を動かし、結果を返す

BCI の仕組みは、大きく4つの段階に分けられます。LIFESCAPES の解説は、脳波計などの測定機器が脳の活動を記録し、その信号をデータとして処理・解析し、解析データをもとに外部デバイスや機器を動かす、という流れで説明しています(LIFESCAPES のコラム)。

段階やることよく使われるもの
1. 測る脳の活動を信号として取り出す頭皮の電極(脳波)、頭蓋内の電極、近赤外光、MRI など
2. 読み解く信号から「何をしようとしているか」を推定する解析アルゴリズム、AI
3. 動かす推定した意図で機械を動かすパソコンの画面、ロボットアーム、電動装具、音声合成
4. 返す機械の動きを見て、触れて、脳が結果を確かめる画面の動き、装具が手を動かす感覚

段階の分け方は編集部の整理です。各段階の記述は、LIFESCAPES・慶應義塾大学・日本総研の資料にもとづきます。

4つ目の「返す」ことを、LIFESCAPES は「フィードバックループ」と呼び、重要だと説明しています。脳活動に応じて視覚や体性感覚の情報が機器から脳に返されることで、脳活動と機器の連携が強まり、身体機能にも作用すると「考えられている」という書き方です。

慶應義塾大学理工学部の紹介記事は、運動のイメージを描くと、大脳の体性感覚運動野から、実際に動かした時と似た脳波が出ることを確かめて研究を進めた、と書いています。体を長く動かさずにいると、運動イメージに沿った脳活動が起きにくくなる、とも述べています(慶應義塾大学「窮理図解」)。この記事は、研究を率いる牛場潤一氏が専任講師だった時期の取材です。現在の状況は、後の節で公式の発表にもとづいて書きます。

AMED の開発ガイダンスは、同じ流れを、BCI システムを「計測ユニット、解読ユニット、制御ユニット、制御対象ユニットの4つのユニットから構成される」と整理しています。各ユニットは、別々に存在しても、複数が統合されていてもよいとされます。解読ユニットは人工知能技術を使って脳信号から意図を読み取り、制御ユニットは解読の結果にもとづいて制御対象を動かす信号を出し、制御対象ユニットには医療機器、福祉機器(意思伝達装置や電動車いすなど)、一般の機器(電動ベッドやスマートデバイスなど)がつながりうる、という説明です。ガイダンスは、これらのユニットはそれぞれ専門とする別の企業が製造・販売する場合が多いと想定しています(AMED 掲載の開発ガイダンス)。BCI の会社に、計測・ソフトウェア・医療機器の薬事といった別々の仕事があるのは、この構成が背景にあります。

ガイダンスはまた、BCI システムを、ユーザーの脳活動から意図や状態を取り出して外部の機器に出力する「出力型 BCI」と、外部からユーザーの脳へ情報を入力する「入力型 BCI」の2種類に分けています。

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侵襲型と非侵襲型|脳のどこで測るか

BCI は、脳の活動をどこで測るかで大きく2つに分かれます。内閣府・文部科学省の研究開発構想は、脳波等の計測方法に、体内に装置を埋め込むなどの「侵襲型」(脳に直接電極を埋め込まない低侵襲型も含む)と、生体を傷つけない「非侵襲型」がある、と整理しています(令和5年12月、内閣府・文部科学省)。

2つの違いを表で見る

項目侵襲型(低侵襲を含む)非侵襲型
測り方体の内側に電極などを置く体を傷つけずに外から測る(頭皮の脳波 EEG、脳磁図 MEG、fMRI など)
長所体の内側から情報を捉えられ、計測精度が高い使う人の心理的・身体的負担が低い
課題使う人の心理的・身体的負担が高い。外科手術が要る簡易な装置は脳活動の信号を捉える力が弱く、データの品質が劣る
日本の位置づけ米国が先行(国の資料の評価)日本は低侵襲型・非侵襲型を中心に技術開発を進めてきた強みがある

出典: 内閣府・文部科学省 研究開発構想(長所・課題・日本の位置づけ)、日本総研の報告書(簡易な装置の課題・侵襲型は外科手術を要する点)。

構想の文書は、米国が侵襲型の技術開発で他国を圧倒している一方、日本は低侵襲型や非侵襲型を中心に技術開発を進めてきた強みを持つ、と書いています。侵襲型は使用者への心理的・身体的負担が高いため、日本では社会的に受け入れられにくい可能性があり、負担の低い非侵襲型への期待が大きい、とも述べています。

代表的な測り方

日本総研の報告書の注釈と NEDO の解説から、非侵襲の主な計測法をまとめます。

  • 脳波(EEG): 頭に電極を装着し、脳神経細胞の電位の変動を頭皮の上から記録します。
  • fMRI: 脳の神経活動によって生じる血流の変化を画像にして解析します。
  • 脳磁図(MEG): NEDO が EEG・fMRI とともに挙げる非侵襲の計測法です。
  • 近赤外光(NIRS): NeU は、微弱な近赤外光で大脳皮質の部分を測り、脳活動を見える化する技術と説明しています。脳波や磁気共鳴など他の脳機能イメージングに比べて、より日常に近い環境で測れる点が最大の特徴だとしています(NeU リクルートサイト)。

NEDO は、非侵襲的な計測について、日本はこれらの計測技術に強みがあり、診断や睡眠改善などのサービスに使われていると書いています。より精度を上げるには、時間の細かさが低い計測を補う方法や、被験者の動きを制限しない測定方法の開発が必要だとも述べています(NEDO「ブレインテック・ニューロテック」)。

AMED の開発ガイダンスは、植込み型を、電極を置く位置によって、脳内刺入針電極型、硬膜下電極型、硬膜外電極型、血管内電極型に分けています。電極を頭蓋内に置くことで、機能を補う程度の高い性能の実現が期待されるとしています。一方、非植込み型は、脳波の計測性能では植込み型に劣るものの身体的な負担なく計測でき、当面は主にリハビリテーションの促進などへの利用が期待されている、と書いています(AMED 掲載の開発ガイダンス)。

侵襲型には、頭蓋内に電極を置くものや、血管の中から測るものがあります。血管から測る米国の Synchron は、自社の電極「Stentrode」を、ステントのように入れる装置と説明しています。公式サイトによると、臨床試験での手術は約2時間で、開頭手術は要らず、多くの人は翌日に帰宅できます。同じページには、治験用の機器であり、米国の連邦法で治験での使用に限られる、という注意書きがあります。ページ下部の免責の文は、臨床上の利益はまだ検証されておらず、どの国・地域でも商用の承認を受けていない、と書いています(Synchron)。

読む技術と書き込む技術|BCI が動かすもの

BCI というと「脳の信号を読んで機械を動かす」使い方が思い浮かびます。この「読む」方向が中心ですが、機械の側から脳に働きかける「書き込む」方向の技術もあります。ここでは両方を分けて整理します。

読む|意図を取り出して機械を動かす

読む技術は、脳の信号から意図を推定し、機械を動かします。日本総研の報告書は、BCI の応用として、身体が不自由な人の運動やコミュニケーションの支援、ゲームや XR 空間でのアバター操作などを挙げています。同じ資料には、米国の Apple が、重度の運動障害のある人が物理的に操作しなくても iPhone や iPad を操作できる「BCI HID」というプロトコルを発表したこと、四肢麻痺の患者が2025年にこれで iPad を操作したこと、ただし操作は限定的だったことが書かれています(日本総研、2026年4月9日)。

読む技術の進み方は、言葉を読み取る研究に表れています。2023年8月に学術誌 Nature に発表された2本の論文は、麻痺のある人が話そうとした時の脳の活動を、文字や音声に変換した結果を報告しています。

項目スタンフォード大学の研究カリフォルニア大学サンフランシスコ校の研究
対象ALS により、はっきり話せなくなった参加者重度の手足と声の麻痺のある、臨床試験の参加者
測り方大脳皮質に刺した微小電極アレイで神経活動を記録発話をつかさどる皮質の表面の、高密度の記録
結果(論文の記載)50語の語彙で単語誤り率9.1%、12万5千語の語彙で23.8%。毎分62語で解読文字では中央値で毎分78語、単語誤り率の中央値25%。音声の合成と顔のアバターの動きにも変換

出典: Willett ほか「A high-performance speech neuroprosthesis」Nature 620巻(2023年8月)、Metzger ほか「A high-performance neuroprosthesis for speech decoding and avatar control」Nature 620巻(2023年8月)。表は論文の要旨の記載を編集部が並べたものです。

スタンフォードの論文は、自然な会話の速さを毎分160語とし、毎分62語はそれに近づき始めた速さだと書いています。UCSF の論文は、解読の仕組みが2週間未満の訓練で高い性能に達したと述べています。どちらも、論文の要旨では参加者1人での研究結果です。誰でも使える製品になったという意味ではありません。

書き込む|刺激で脳の働きに働きかける

機械の側から脳に働きかける技術は、日本総研の整理では、BCI とは別に「ニューロモジュレーション」と呼ばれます(AMED の開発ガイダンスは、外部から脳へ情報を入力する「入力型 BCI」に分けており、非植込み型の例として、薬物抵抗性のうつ病に対する経頭蓋磁気刺激〔TMS〕装置が承認されていると挙げています)。日本総研の図は、これを「電気や磁気刺激で神経の働きを調整」する技術としています。例として、同資料は、スウェーデンのスタートアップが開発した脳刺激ヘッドセットが、在宅でのうつ病治療で米国 FDA(食品医薬品局)の承認を2025年に得たことを挙げています(日本総研)。

国内で医療として行われている脳への刺激の代表例が、脳深部刺激療法(DBS)です。北海道大学病院の患者向け資料は、DBS を「脳内に刺激リードを埋め込み、その先端の電極から脳深部に電流を流し、パーキンソン病をはじめとする病気の症状を改善させる治療」と説明しています。国内の適応疾患は難治性疼痛と不随意運動疾患(パーキンソン病・本態性振戦・ジストニア)に限られる、パーキンソン病そのものを治す治療ではなく症状を緩和する治療である、とも書いています(北海道大学病院の患者向け資料。適応疾患は資料の作成時点の記載です)。

もう一つの方向が、見えない人に視覚を届ける研究です。日本総研の報告書は、Neuralink が2026年内の開発を予定する「Blindsight」を、専用の眼鏡のカメラ映像を分析して脳の視覚野を刺激する仕組みと紹介しています。同社の2025年夏の発表にもとづく計画で、実現した成果ではありません。

国の研究開発構想は、脳波等の計測と刺激を組み合わせる例として、ニューロフィードバックと経頭蓋電気刺激を挙げています。また、fMRI を使ったデコーディッドニューロフィードバック(DecNef)を、日本の研究者が切り開いてきた BMI 技術の一つとし、特定の脳活動パターンを誘導する技術と説明しています(内閣府・文部科学省)。

BCIは誰でも同じように操作できる?個人差の研究

BCI は、念じれば誰でも同じように動かせる技術ではありません。産総研の連載記事は、「身体を動かす想像」を使う運動想像型 BCI には操作性の個人差の問題があり、同じシステムを使っても高精度に操作できる人と、十分な制御が難しい人がいる、と書いています。この問題の解決のため、個人差の神経基盤の解明が求められている、という説明です(産総研マガジン、2026年7月2日)。

この個人差を調べた研究を、公式の発表から2つ並べます。

発表公表された内容
京都大学・国立精神・神経医療研究センター(NCNP)・産総研(2022年8月9日)手の動きを想像するときの脳波でパソコンのカーソルを操作する「脳波BCI」と、機能的MRIを同時に計測した。BCIの操作が成功したときは、大脳の深部にある大脳基底核の「被殻」の活動が活発だった。操作が得意な人では被殻が運動野と機能的につながり、苦手な人では運動野に加えて、認知や情動に関わる広い大脳領域とつながっていた。対象は24名の健康な成人で、全員が同じ程度BCIの練習をしており、差は練習の差によるものではない、と記載されている
産総研(2026年7月2日、連載記事)NCNP・京都大学と連携した研究で、MRIを用いた研究から、運動に関わる脳領域の大きさがBCI操作能力と関連することを明らかにした。BCIを安定して制御できる人では、運動関連領域と脳深部の基底核を結ぶ脳ネットワークが重要な役割を果たすことを示した。今後は個人差のメカニズムの解明と、個別最適化の実現を目指す

出典: NCNP「Brain-Computer Interface操作の得手不得手に関わる脳回路を発見」(2022年8月9日)、産総研マガジン「脳活動で機器操作」(2026年7月2日)。表は発表の記載を編集部が要約したものです。

2022年の発表は、BCI操作に得手不得手がある理由の「少なくとも一部」が、BCIを操作するときの脳の神経回路の使い方の個人差によることが示唆される、という書き方です。研究者のコメントとして、操作は一生懸命「考える」よりも直感的に「感じる」のがよいのかもしれない、という見方も載っています。これは仮説に近い見方で、確定した結論ではありません。同じ発表は、将来の応用として、脳回路の使い方に合わせた訓練法など、個人の特性に合わせたテーラーメイドのBCI技術の開発に期待できる、としています。また、脳に電極を埋め込まない非侵襲の計測によるBCIでは、操作能力の個人差が大きく、うまく使えない人も多いのが現状だ、とも書いています(NCNP)。

この研究の流れは、脳波・MRI などの計測と、データ解析の経験が生きる分野です。仕事の面では「BCI に関わる仕事」の節と、BCI・脳科学の仕事と就職先で、計測や解析を担う募集を紹介しています。

実例|リハビリと意思伝達

BCI の実用は、いま医療の分野から進んでいます。国内の代表的な2つの使い方、脳卒中後のリハビリと、ALS などの意思伝達を順に見ます。

脳卒中後の手指のリハビリ

脳卒中で麻痺が残った手の運動機能を取り戻すために、BCI(BMI)を訓練に使う方法があります。慶應義塾大学の紹介記事は、その仕組みを次のように書いています。麻痺した手をモーターの入った箱の上に固定し、患者が指を伸ばそうと念じると、その脳波の信号が BMI を通してモーターに伝わり、指が伸ばされます。ただし、脳波のパターンが指を伸ばすものと一致しないと、モーターのスイッチは入りません。何年も麻痺が続いていると、最初はうまくいかず、学習で、リラックスしながらきちんと念じられるようになる、という説明です(慶應義塾大学「窮理図解」)。

この考え方を製品にしたのが、慶應義塾大学発の LIFESCAPES です。公式の技術説明によると、頭皮の上にあるウェアラブルセンサで、脳卒中で傷ついた脳の部位を迂回する神経活動を検出します。同時に、麻痺した手指に付けた電動装具を動かし、脳と手指をつなぐ代償回路の活性化を促します。構成は、運動野の生体信号を取るヘッドホン型のヘッドセット、制御ボックス、電動装具、制御用のタブレットです(LIFESCAPES「Technology」)。

時期出来事(LIFESCAPES の公式発表)
2024年3月26日「LIFESCAPES 医療用 BMI(手指タイプ)」が医療機器認証を取得。クラスII管理医療機器で、使用目的は「手指等の筋力を維持、発達又は回復させるために用いる」(発表)
2024年6月1日「運動量増加機器」として保険適用が開始(発表)
2025年12月12日開発中の「(仮称)LIFESCAPES 治療用 BMI」が、厚生労働大臣から「先駆的医療機器」の指定を受けた。厚生労働省の一覧では「(R7先駆機)第2号」(発表、厚生労働省の一覧)

この表の3行目は、承認ではなく指定です。厚生労働省の一覧は、指定を受けた品目の「予定される使用目的又は効果」を載せる形式で、この品目は「脳卒中後の重度麻痺患者を対象として手指の麻痺、又は痙縮を改善するために用いる」とされています。発売済みの2行目の製品とは別の、開発中の機器です。

効果について、LIFESCAPES は、BMI 技術を使ったリハビリの研究が国際的に行われており、脳卒中治療ガイドライン2021[改訂2023]にも記載がある、と説明しています(同社の記述で、当サイトでガイドラインの原文は確かめていません。効果の大きさは使う人や症状によって異なり、当サイトは効果を評価していません)。一方、同じ説明は、法令上の製品の位置づけと、BMI 技術一般の治療原理に関する学術的な検討との間に、違いがある場合があるとも断っています。

慶應義塾大学と JST の2026年4月13日の発表は、この研究チームが脳卒中後の重度まひの機能回復に取り組み、LIFESCAPES を通じて BCI を医療機器化して、全国60の医療機関への導入を進めてきたと書いています(慶應義塾大学・JST の発表)。数字は研究チームの発表の記載で、当サイトが数えたものではありません。

ALS などの意思伝達と、植込み型の治験

意識や感覚が保たれているのに、意思の伝達や運動が難しくなる状態を、「閉じ込め状態」と呼びます。ALS(筋萎縮性側索硬化症)などの重い神経の病気で起こります。BCI は、このような人が外部の機器を操作する手段として研究されてきました。

大阪大学発の医療機器ベンチャーJiMED は、頭蓋内に植え込んだ電極から取った脳波を AI で解析し、思考だけで外部機器を操作できるようにする、ワイヤレスの植込み型 BCI(wiBCI)を開発しています。出資した慶應イノベーション・イニシアティブの2026年6月19日の発表によると、JiMED が提出した治験計画届を、医薬品医療機器総合機構(PMDA)が受理しました。2026年内に開始を予定する、ALS の患者を対象にした日本初の企業治験の準備を進めており、今回の調達額は、他の出資者からのものを含めて総額3.3億円です(KII のプレスリリース)。

NEDO の起業家支援のページには、同社の計画として、ALS の患者を対象にした企業治験の実施、国内での適正使用指針づくりの開始、頭蓋内脳波のデータベース構築、北米拠点の設立が載っています(NEDO StarTips「株式会社JiMED」、2025年3月時点)。

治験の準備が進んでいる、という意味です

治験計画届の受理は、治験を始める手続きの一つです。治験の結果や、医療機器としての承認を意味するものではありません。効果や安全性は、治験の結果が公表されてから、公式の発表で確かめてください。

研究の面では、大阪大学の平田雅之研究室が、てんかん手術の前の評価で頭蓋内電極が入っている患者を対象に、日本語を読んでいる時の頭蓋内脳波から、日本語の文章と音声を直接解読できるかを調べる研究を、2024年12月3日から2028年3月31日の期間で公開しています(大阪大学 脳機能診断再建学 情報公開)。これは研究の計画で、結果はまだ示されていません。

健康な人のトレーニングへの応用研究

BCI を病気やけがのない人の運動のトレーニングに使う研究も出ています。慶應義塾大学と JST は2026年4月13日に、同大学の研究チームが、頭皮の脳波と AI で「イメトレ(運動イメージ訓練)」中の脳の状態を可視化し、自分の脳状態を切り替える練習を行うと、脳状態の切り替え能力が上がり、実際の運動パフォーマンスが改善することを明らかにした、と発表しました。成果は2026年4月10日付で米国科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載されています(慶應義塾大学・JST の発表)。

発表によると、実験は、他者の脳波を見せる偽のフィードバックの対照群を置いた二重盲検ランダム化比較の設計で、2日間の訓練を行いました。本当のフィードバックを受けた参加者は、訓練後、BCI の画面表示がない状況でも運動に関わる脳波(感覚運動リズム)を切り替える傾向が強まり、その変化は、筋肉を収縮させる時と力を抜く時の反応時間の短縮と関連していた、とされています。

ただし、これは健康な成人を対象にした研究です。発表自体が、今後は対象者や課題を広げた検証、効果の持続性や個人差の評価、実際の運動支援の場面での有効性の確認を進める、と書いています。医療・ヘルスケア・スポーツなどへの応用は、これからの目標です。

BCIの実用化はどこまで進んだか|2026年11月時点の段階

「BCI は実用化されましたか」という問いの答えは、使い道と機器によって違います。公式の発表で確かめた範囲を、段階で分けて並べます。

段階例公式の記載
医療機器として販売・保険適用LIFESCAPES 医療用 BMI(手指タイプ)2024年3月26日に医療機器認証を取得、2024年6月1日から「運動量増加機器」として保険適用が開始(発表、発表)
開発中で、先駆的医療機器に指定(仮称)LIFESCAPES 治療用 BMI2025年12月12日に厚生労働大臣から指定。承認ではなく指定(発表)
国内で企業治験の準備中JiMED のワイヤレス植込み型 BCI(wiBCI)治験計画届を PMDA が受理。ALS の患者を対象にした企業治験を、2026年内に開始する予定(2026年6月19日の発表)
海外で治験中・治験用の機器Synchron の Stentrode、NeuralinkSynchron の公式ページは「治験用の機器」と注意書き(Synchron)。Neuralink は2026年3月時点で臨床試験の参加者が21名(日本総研)
研究段階話そうとした言葉を文字や音声にする研究2023年8月の Nature の論文2本。少数の参加者での結果(論文)

表は、各社・各機関の発表の記載を編集部が段階で並べたものです。段階の名前は編集部の整理で、国の分類ではありません。

国の側の動きも確かめられます。AMED のサイトに掲載されている開発ガイダンスは、BCI の用途のうち、神経難病や四肢麻痺のある人が意思を伝えたり環境を操作したりする「機能再建」を、実用化のための開発が最も進んでいる分野としています。ALS の患者の10〜20%が完全閉じ込め状態まで進行する、という記載もあります。ニューロリハビリテーションの分野では、薬事承認された製品が実用化されている、とも書いています。同じガイダンスによると、BCI システムの評価指標は、平成22年(2010年)12月の最初の指標から15年あまりを経て大幅に改訂され、令和8年(2026年)3月30日付の通知で公表されました。ガイダンスの対象は、比較的近い将来に臨床試験が予定されている、運動麻痺と意思伝達障害のある患者のための、脳信号を読む植込み型 BCI システムです。非植込み型は対象外です(AMED 掲載の開発ガイダンス)。

将来の見通しとして、日本総研は、BCI は2030年頃から医療向けに実用化され、徐々に普及すると書いています(日本総研、2026年4月9日)。これは同社の展望で、確定した予定ではありません。

「実用化」には幅があります

認証を受けて保険適用になった機器、開発中で先駆的医療機器に指定された機器、治験の準備中の機器、治験用で商用には承認されていない機器は、同じ段階ではありません。ニュースで「実用化へ前進」と読んだときは、どの段階の話かを、会社や機関の公式の発表で確かめてください。

日本のBCI|国の取り組みと、会社・研究機関

「BCI 日本」の状況を、国の取り組み、会社、研究機関の順に整理します。

国の取り組み

内閣府・文部科学省の研究開発構想は、国内の主な取り組みとして、次のものを挙げています(令和5年12月)。

  • 内閣府のムーンショット型研究開発制度の目標1「2050年までに、人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現」。非侵襲型や低侵襲型の BMI の技術開発を進めています。
  • AMED(日本医療研究開発機構)の事業。2013年からの「脳科学研究戦略推進プログラム」などで、DecNef などの BMI 技術の開発が進められてきました。
  • NICT と大阪大学が2011年に設立した脳情報通信融合研究センター(CiNet)。7T-fMRI や MEG を使い、脳科学と情報通信の融合研究に取り組んでいます。
  • 大学発のベンチャー企業。構想は例として PGV 株式会社と LIFESCAPES 株式会社を挙げています。

BCI を医療機器にするための国の指針も整ってきました。AMED のサイトに掲載されている開発ガイダンスによると、厚生労働省の通知で、BCI システムの評価指標が令和8年(2026年)3月30日付で大幅に改訂されて公表されました。開発ガイダンスはこの評価指標と連携して新たに作られ、米国 FDA の植込み型 BCI 装置のガイダンス(2021年5月20日)との整合も図ったとしています(AMED 掲載の開発ガイダンス)。

開発ガイダンスを作ったのは、AMED の「次世代型医療機器開発等促進事業」の研究開発課題「埋込型ブレインマシンインターフェースに関する開発ガイダンス策定」(令和6年8月〜令和8年3月)です。研究開発代表者は株式会社 JiMED 取締役の平田雅之氏で、分担機関は大阪大学と情報通信研究機構です。外部の専門家による5回のワーキンググループの議論を経て、日本 ALS 協会や JEITA の意見も反映したと、AMED の事後評価報告書は書いています(AMED 事後評価報告書、課題の概要)。JiMED はこの記事で紹介している会社でもあるので、読むときの参考にしてください。BCI の会社に薬事の仕事があるのは、こうした枠組みがあるためです。

構想は、BMI やニューロフィードバックによる身体機能の補佐や拡張、リハビリテーションへの応用に期待が寄せられているとしています。同時に、思考や感情をつかさどる脳という器官に働きかける技術であることから、安全面だけでなく、ELSI(倫理的・法的・社会的課題)やプライバシー保護の観点も考慮する、と書いています。

NEDO は、2026年度の「NEDO 先導研究プログラム/フロンティア育成事業」の研究開発テーマに「脳・神経機能の回復・拡張や人機協働を実現するブレインテック・ニューロテック」を挙げ、非侵襲的な計測の高度化とその応用を後押ししています(NEDO)。

ムーンショット目標1の研究プロジェクトを率いる金井良太氏(アラヤ)のチームは、2022年10月に「ブレイン・テック ガイドブック ver1.0」を公開しました。研究開発の方針として「Trusted BMI(信頼できる BMI)」の実現を掲げ、一般の人が安心して使える世界をつくることが重要だと述べています(ATR)。

会社と研究機関

当サイトが公式の資料で確かめた、BCI・脳の技術に取り組む国内の会社と研究機関を、役割で分けて並べます。会社の事業は各社の公式の説明にもとづき、募集は掲載中の求人から機械で出しています。

会社・機関取り組み(公式の説明)掲載中の求人
LIFESCAPES脳卒中後の運動麻痺のリハビリ用 BMI 医療機器の開発・販売(慶應義塾大学発)4件
JiMEDワイヤレス植込み型 BCI 医療機器の開発(大阪大学発・ALS の企業治験を準備中)3件
アラヤAI とニューロテクノロジーの研究開発。ムーンショット目標1のプロジェクトを率いる(金井良太氏)4件
NeU近赤外光(NIRS)の脳計測デバイス、ブレインフィットネス、ニューロマーケティング5件
NICT 脳情報通信融合研究センターCiNet。7T-fMRI や MEG を使った脳科学と情報通信の融合研究(国の研究機関)23件

2026年11月5日時点でBCIジョブに掲載中の求人の集計(各社の公式の採用ページから取得)。業界全体の統計ではありません。

各社の位置づけを、公式の説明から補います。

  • LIFESCAPES: 前の節のとおり、手指のリハビリ用の BMI(BCI)を医療機器として販売し、治療用 BMI を開発中です。公式の「About」は、慶應義塾大学理工学部の牛場潤一研究室で10年間にわたり培ってきた BMI 技術を土台にしていると書いています(LIFESCAPES「About」)。
  • JiMED: 前の節のとおり、ワイヤレス植込み型の治験を準備しています。2020年3月に設立されました(KII の発表)。
  • アラヤ: ムーンショット目標1のプロジェクトマネージャーとして金井良太氏の名前が、ATR の発表に出ています(ATR)。
  • NeU: 東北大学の脳科学の知見と日立グループの技術をもとにした脳科学の会社です。ブレイン・ヘルステックとして、仕事や暮らしの中での脳活動を測って見える化する事業を行っています(NeU)。
  • 大阪大学の研究室: 平田雅之氏の研究室は、頭蓋内脳波を使った BCI(研究室の呼び方は BMI)の研究を公開しています(前の節)。NEDO のページは、JiMED の創設者を平田氏としています。

脳科学の研究機関や、ほかの会社の取り組みは、脳の技術の会社と研究機関で、働く先として整理しています。

海外の動き|侵襲型が先行し、大手 IT 企業も参入

海外の動きは、国の資料と日本総研の報告書から整理します。

話題公式の資料にある内容出典
米国の研究の歴史1970年代前半から DARPA(国防高等研究計画局)が BCI の研究を進めてきた。2013年発表の Brain Initiative は、2027年までで総額約66億ドル内閣府・文科省
Neuralink2023年に FDA が脳内にチップを埋め込む臨床試験を承認(国の構想の記載)。2026年3月時点で21人が臨床試験に参加し、現状は手足が不自由な人のマウスやキーボードの操作など運動の支援が中心。発話の支援は2026年内の実装を予定内閣府・文科省、日本総研
Merge Labsサム・アルトマン氏らが2026年1月に創業した BCI の会社。超音波で脳の血流の変化を読み取る方法を目指す。ただし日本総研は、頭の外から超音波で脳活動を高精度に測るのは、超音波が成人の頭蓋骨を通りにくいため現在の技術では難しい、と補足している日本総研
大手 IT 企業Apple の BCI HID、Microsoft とスペインの Inbrain Neuroelectronics の提携(2025年)など。脳の信号だけでなく、心拍や筋電などほかの生体信号を使うサービスも開発されている日本総研
イヤホン型の脳波計フランスの NaoX Technologies のイヤホン型デバイスが、2026年1月に FDA の医療機器承認を取得。イヤホン型の脳波デバイスでは世界初。米国内でてんかんのケアや睡眠のモニタリングに使われている日本総研
輸出管理の動き2021年に米国商務省が BCI 関連技術の輸出管理に向けた告示案のパブリックコメントを実施内閣府・文科省

国の構想は、侵襲型のブレインテックでは、民生と安全保障の両面で米国が他国を圧倒している、と書いています。日本総研の報告書は、BCI の臨床試験が世界各地で本格化している、と整理しています。

日本総研は、脳の基盤モデルにも触れています。脳活動を解読・シミュレートするために大規模な神経データで事前に学習したモデルで、研究開発の段階だとしています。脳の信号を読み解く AI が、BCI の性能を左右する分野です。

Neuralink の人数と計画は、日本総研が同社の発表(2025年夏)などを参照して整理した内容です。当サイトは同社の公式ページを直接は確かめられていません。

安全と倫理|使う前に知っておきたいこと

脳の信号は、その人の内面に近い情報です。BCI は医療で大きな期待がある一方、安全とプライバシーについて、国や国際機関が注意を呼びかけています。

技術の限界と効果の確かさ

日本総研の報告書は、ブレインテックの課題として次の点を挙げています(2026年4月9日)。

  • イヤホンやヘッドバンドのような簡易な装置は、脳活動の信号を捉える力が弱く、fMRI や医療用の脳波計に比べて、データの質が劣る。
  • 生体信号は個人差や健康状態で変わり、研究成果の再現性の低さが指摘されている。日常生活では信号にノイズが混ざりやすい。
  • 医療以外の分野では明確なルールや基準が定められていないことが多く、科学的な根拠が乏しい製品が出回る懸念がある。
  • 高精度な神経データを取れる侵襲型の装置は、外科手術を要する。

ATR などが公開したブレイン・テック ガイドブックも、同じ問題意識から作られました。「集中力の向上」「睡眠状態の改善」などの宣伝文句に科学的な根拠があるのか、一般の消費者が自分で扱うことに危険はないのか、という疑問に答える資料です。ただし、このガイドブックは医療・研究用の製品を対象にしていません(ATR、2022年10月14日)。

医療機器については、機器ごとに状態が違います。認証を受けて保険適用になった機器、開発中で先駆的医療機器に指定された機器、治験の準備中の機器、治験用で商用には承認されていない機器を、同じものとして読まないことが大切です。本文の中でも、それぞれ公式の発表の範囲で区別して書きました。

プライバシーと倫理

日本総研の報告書は、脳の技術の倫理や法の面の課題として、次の点を挙げています。デバイスのハッキングや神経データの不正取得のリスク。脳への刺激や介入が、本人の意図しない脳活動を引き起こす可能性。採用や昇給に脳活動のデータを使うような、生体信号による偏見や差別。従業員や生徒の監視のようなプライバシーの侵害。脳活動が発端の操作による事故や犯罪での、責任の所在の不明確さです。

国際的な動きとして、同じ資料は次のことを挙げています。

  • ユネスコが、2025年11月にブレインテックに関する世界的な倫理の枠組みを採択した。18歳未満の子どもの利用制限や、消費者向け製品の誤用・悪用を防ぐ政策づくりといった指針を示している。法的な拘束力はない。
  • チリが2021年に神経データの保護を憲法のレベルに引き上げた。米国コロラド州が2024年に神経データの保護を既存の法の枠組みに統合した。
  • EU の AI 法(2024年発効)は、職場や教育機関で個人の感情を推測することを、医療や安全上の理由がある場合を除いて原則禁止としている。日本企業も、域外適用で対象になる可能性がある。

ユネスコの公式ページは、脳の情報は私たちのもっとも私的な考えを明らかにしうるとして、「精神的なプライバシーと脳データの機密性」を、保護すべき項目の一つに挙げています。同じページは、非侵襲の機器から得た神経データを、企業が行動に影響を与えるために使う可能性にも警告しています(UNESCO)。日付と各国の動きは、日本総研の整理によります。

日本の国の構想も、脳という器官に働きかける技術であることから、安全面だけでなく ELSI とプライバシー保護の観点を考慮するとしています。データベースを作る際には、個人情報が含まれることを踏まえ、取り扱いとセキュリティに十分留意するとも書いています(内閣府・文部科学省)。

BCI に関わる仕事

BCI の仕事は、脳科学の研究者だけではありません。公式の採用ページで確かめた、当サイト掲載中の募集から、仕事の種類ごとに紹介します。募集は変わるので、応募の前に各社の公式ページで最新を確かめてください。

これまでの節で出てきたとおり、BCI を製品にするには、計測、ソフトウェア、薬事と臨床、事業づくりが必要です。

計測と研究

ソフトウェアとプロダクト

薬事・臨床開発

BCI を医療機器として届けるには、承認または認証を受ける必要があり、機器によっては治験(臨床試験)も必要です。保険で使えるようにするには保険適用の手続きもあります。この記事で取り上げた会社の募集にも、この分野の職種があります。

  • 薬事スペシャリスト: 医療機器の薬事戦略と保険適用申請の方針を立てて進める仕事です。
  • 臨床開発スペシャリスト(業務委託契約含む): 医療機器治験のプロジェクトマネージャーとして、治験の推進、手順書や各種申請書の作成、行政相談・届出などを担当します。
  • 薬事部長: 国内での企業治験の準備の中で、PMDA との相談・協議を通じた薬事戦略を具体化する、薬事の責任者です。

事業開発・研究推進

  • 事業開発部長: 北米などの事業戦略、海外の提携、海外の専門医との関係づくりを担当する仕事です。
  • [R&D]プロジェクトマネージャー補佐: 内閣府ムーンショット事業の BMI 研究で、プロジェクトマネージャーと研究者を支える仕事です。研究計画書・報告書の作成補助、会議運営、予算管理の補助を担当します。

BCI に近い話題として、脳活動から消費者の反応を調べるニューロマーケティングの仕事も、同じ会社の募集にあります。海外で話題の Neuralink はニューラリンクとはで扱います。

職種ごとの求人は、脳波計測・実験技術、エンジニア・プロダクト開発、薬事・臨床開発・品質、研究員・研究開発の一覧で見られます。仕事全体はBCI・脳科学の仕事と就職先にまとめています。

出典

すべて2026年11月5日に開いて確かめました。数字は各社・各機関が公表したもので、当サイトが測定したものではありません。将来の予定は計画で、確定したものではありません。

確かめられなかったこと: JiMED の公式サイトは表示に JavaScript を使うため本文を読めず、治験の情報は出資者の発表と NEDO のページで確かめました。Neuralink の公式ページ、ユネスコの採択の日付と全文(ページが採択の日付を載せず、日本総研の記述に頼りました)、脳卒中治療ガイドライン2021[改訂2023]の原文は確かめていません。Naox・Merge Labs・Apple・Microsoft・Meta の内容は日本総研の報告書によります。AMED 掲載の開発ガイダンスは、本文に作成者の名称がありません。作成の主体は、AMED の事後評価報告書と課題の概要(研究開発代表者・JiMED の平田雅之氏)で確かめました。産総研が運営する医療機器開発ガイドラインのサイトにある同じ構成の草案(令和8年3月)は、表紙に AMED と経済産業省の名があります。産総研マガジンの記事は日刊工業新聞社の連載の転載で、産総研のプレスリリースではありません。慶應義塾大学の「窮理図解」は、牛場潤一氏が専任講師だった時期の取材で、日付は記載がありません。