ニューロマーケティングとは|ひとことで

ニューロマーケティングは、脳科学の道具を使って消費者の反応を調べ、商品や広告づくりに生かす調査の手法です。脳科学ベンチャーの NeU は、これを「脳科学をもとに消費者の無意識な心理や行動を分析することで、商品開発や広告宣伝などに活用するためのマーケティング手法」と説明しています。アンケートやインタビューの主観的な評価ではとらえきれない、ヒトの無意識の反応を、脳活動やアイトラッキングなどの生体信号の計測で分析し、数値にする、という考え方です(NeU「ニューロマーケティング」)。

商社のマクニカは、同じ手法を「視線や脳波などの生理的・神経的な信号を測り、消費者の好み、動機、購入決定のきっかけを調べるマーケティング調査手法」と書いています(マクニカ)。「ニューロリサーチ」や「コンシューマー・ニューロサイエンス(消費者神経科学)」と呼ばれることもあります(NeU のコラム、2026年1月9日更新)。

見方中身
何を調べるか商品・広告・パッケージ・売り場などを見たり使ったりした時の、無意識の反応(注意、好み、ストレス、興奮など)
何で測るか脳活動(脳波、近赤外光の fNIRS、fMRI)、視線、心拍、皮膚の電気活動など
誰が使うかメーカーや広告会社などの企業。調査会社や脳科学の会社が、実験の設計から報告までを請け負う
BCI との違いBCI は脳の信号で機械を動かす技術。ニューロマーケティングは、脳の信号を人の反応の分析に使う

表は、NeU とマクニカの公式の説明と、日本総研の整理を編集部がまとめたものです。

この記事は、「ニューロマーケティングとは何か」に答えたうえで、脳の技術の仕事を探している方に向けて、仕事の中身(調査の設計・計測・解析・コンサル)と、会社の公式情報を厚く書きます。効果の確かさと脳の情報の扱いにも、研究論文と国際機関の資料で触れます。数字や出来事は、公式の発表や査読論文を開いて確かめたものだけを書きました。

BCI・ブレインテックとの関係|同じ脳計測の応用

日本総研は、ブレインテックを「脳科学・神経科学の知見とテクノロジーを組み合わせた技術やサービスの総称」とし、専用の装置で脳活動を計測し、データをアルゴリズムで解析して製品に応用する流れだと説明しています。同じ資料の図は、応用の例として、BCI(ブレイン・コンピューター・インターフェース、脳活動にあわせたコンピューター制御)、ニューロフィードバック(脳活動を見ながらの自己制御)、ニューロモジュレーション(電気や磁気の刺激で神経の働きを調整)、そしてニューロマーケティング(脳活動から消費者の嗜好や行動を分析)を並べています(日本総研「ブレインテック最新動向2026」、2026年4月9日)。

つまり、ニューロマーケティングは、BCI と同じ「脳を測る」技術から枝分かれした応用の一つです。違いは目的にあります。

BCI(ブレイン・コンピューター・インターフェース)ニューロマーケティング
目的脳の信号を読み取り、パソコン・ロボット・電動装具などを動かす脳や体の信号から、消費者の反応を分析する
使う場面麻痺のある人のリハビリや意思伝達など、医療が中心商品開発、広告、パッケージ、売り場の評価
測り方頭の中に電極を置く方式から、頭皮上の脳波まで幅がある主に身体を傷つけない方式(脳波、近赤外光、視線など)
結果の出方機械の動き実験の結果の報告書と考察

出典: 上の日本総研の資料と、内閣府のムーンショット型研究開発事業のプロジェクトがまとめた資料(ATR・アラヤ・慶應義塾大学「ブレイン・テック ガイドブック」、2022年10月14日)。比較の表は編集部の整理です。

BCI の全体像はブレインマシンインターフェース(BMI・BCI)とは、ブレインテックという言葉の範囲はブレインテックとはにまとめています。

何を測るのか|脳波・fNIRS・視線・心拍

ニューロマーケティングで測る信号は、大きく「脳の活動」と「それ以外の生体信号」に分けられます。NeU のコラムは、次のように整理しています(NeU のコラム、NeU「ニューロマーケティング」)。

測るもの何を捉えるか(公式の説明)特徴と注意
fMRI(脳活動)磁気共鳴信号から、神経活動に伴う血中の酸素濃度の変化を測り、脳の活動を可視化するNeU は、従来の脳計測は装置の制約から実験室での実験がほとんどだったと書く
fNIRS(近赤外光)ごく弱い近赤外光で、神経活動に伴う血流の変化を測る。NeU の装置は主に前額部(前頭前野)を測る身体への負担が少なく、脳波や MRI より日常に近い環境で測れる。NeU は NIRS と fNIRS に明確な違いはないとしている
脳波(EEG)頭皮に付けた電極で、脳の電気的な信号を測るマクニカは、fMRI や脳磁図より低コストで、最も広く使われる方法の一つと書く
アイトラッキング(視線計測)視線や瞳孔の動きから、どこを見ていたか(視覚的な注意)を知る脳活動との同時計測で、より多面的に考察できるとされる。眼鏡やまつげなどに配慮が要る
心拍・心電心拍の変動から、ストレスや疲労を指標にするNeU は LF/HF による指標化を挙げる
皮膚電位(EDA)皮膚の電気活動から、ストレスや覚醒の度合いを見る自律神経の変化を把握する

出典: NeU(コラム、NIRS のページ、ニューロマーケティングのページ)、マクニカのページ。「特徴と注意」の欄は各社の説明と、下の節の研究論文を編集部がまとめたものです。

fNIRS の測り方は、NeU のページが具体的に書いています。頭部に3cm の間隔で光源と受光センサーを置き、800nm 付近の近赤外光が人体を通り抜けてヘモグロビンに吸収される性質を使い、脳が活動して血流が増えた場所の光の減り方から活動の変化を見ます。放射線や薬品を使わない、と説明しています(NeU「NIRS ハードウェア&システム」)。

持ち運べる fNIRS の研究も進んでいます。2018年の総説は、小型で無線の装着型 fNIRS は、MRI など標準的な脳画像の方法では不可能な、日常に近い場面での測定を可能にする、とその魅力を書く一方、制約のない場面で正確に脳活動を推定するには課題があり、解決策が要る、と論じています(Pinti ほか、Jpn Psychol Res、2018年10月)。

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どう使われているのか|用途と事例

用途は、商品づくり(モノづくり)とマーケティングの2つに大きく分かれます。NeU のページは、モノづくりでは研究開発や商品企画に、マーケティングでは広告宣伝や購買行動の評価に使うと整理しています。マクニカのページは、広告のクリエイティブ、製品開発、価格設定、店舗のレイアウト設計などを挙げています。

NeU が公表している事例

NeU のページとコラムは、次の事例を載せています。いずれも会社の説明で、結果の数字は公表されていません。

取引先内容(NeU の説明)
キリンホールディングス食品成分の臨床試験に協力。ウェアラブル型の fNIRS を使用
TOPPAN(旧:凸版印刷)認知脳科学にもとづく最適なデザイン開発の共同研究。独自指標の生体信号データで、広告のクリエイティブを点数にする評価サービスを共同で開発
森永製菓チョコレートの商品価値を、生体データと主観の調査で評価
バンダイベビートイの共同開発。赤ちゃんの脳血流・心拍変動・表情などから気分を切り替えるメロディを共同で開発。2026年8月7日には、BlockLabo の新商品「1才からのブロック」への検証協力を発表
流通経済研究所前頭前野の脳活動とアイトラッキングを同時に測れる「NeU-VR」で、VR 空間の商品棚を評価し、売り場づくりの研究を支援

出典: NeU「ニューロマーケティング」、NeU のコラム(2026年11月5日に確認)。

ほかの会社の事例

日本総研の2026年の報告書は、マーケティングでの活用の例として、アース製薬が脳波や視線を活用して、視認性や好感度の高い商品包装に改良したことと、ロレアルがイベント来場者の脳波からおすすめの香水を提案するブースを展示したことを挙げています(日本総研「ブレインテック最新動向2026」)。

クロス・マーケティングは、2016年1月21日に、脳科学の知見でコンサルティングを行う株式会社センタンと業務提携し、脳波を使った調査を始めると発表しました。発表は、視聴者の関心が高い時に高まる θ(シータ)波を測り、センタンが蓄積したデータと比べて、テレビ CM が購入につながるかを評価する例を挙げています(クロス・マーケティング、2016年1月21日)。この提携が現在も続いているかは、確かめられませんでした。

仕事の中身|調査の設計・計測・解析・報告

ニューロマーケティングの仕事は、実験の技術と、ビジネスの提案の両方を使います。NeU の「ニューロマーケティング・コンサルタント」の募集は、仕事を「クライアントからの要望のヒアリング→実験デザインの提案→計測実施→解析→報告」という流れで進む、と書いています。NeU のコラム(2026年1月9日更新)は、同じ流れをさらに6つの段階に分けて説明しています。ここでは、その6段階に、それぞれ誰が何をするのかを重ねて整理します(NeU 募集要項、NeU のコラム)。

6つの段階と、仕事の中身

段階やること(NeU の説明)仕事で求められる力
1. 調査目的をまとめる何を知りたいかを決め、「既存の調査方法ではなぜ目的を達成できないのか」を考える。これが脳計測で調べる理由になる顧客の課題を聞き取る力、調査の知識
2. 先行研究を調べ、実験を設計する世界の論文から近い研究を探し、どの脳領域を測るか、どの画像を何回どんな長さで見せるか、データをどう解析するかを決める。NeU は、実験デザインを「もっとも重要な工程」と書く論文を読む力、実験計画、統計の考え方(学術の調査の経験が生きる)
3. 対象者を決めて募集する年齢・性別などに加え、脳計測では利き手、視線計測では眼鏡やまつげ・マスカラの有無など、特別な確認が要る募集と当日の運営、細かな確認
4. 測定する脳計測、アイトラッキング、皮膚電位などで、商品や広告を見た時の反応を記録する装置の扱い、現場の運営、参加者への配慮
5. 解析する事前に決めた統計解析の計画に沿って、群ごとの反応の違いを統計的に分析するデータ解析(募集要項は Excel、R、MATLAB などを挙げる)
6. 解釈して提案する調査目的と照らして結果を評価し、広告の内容やパッケージの改善案などを関係者と考える。NeU は、数値を出して終わりではなく、マーケティング活動への応用まで踏まえた考察を添えて報告する、と書く提案書・報告書をまとめる力(PowerPoint など)、ビジネスの理解

出典: NeU のコラム「はじめてのニューロマーケティング」(2026年1月9日更新)、NeU「ニューロマーケティング」、NeU 募集要項。右の列は、募集要項の記述にもとづく編集部の整理です。

実施の流れと期間についても、NeU のページに書かれています。お問い合わせ、ヒアリング・お見積、契約、テーマ検討・計測検証、実験、解析、報告の7ステップで、全体の納期の目安は3か月です。料金は、実験の人数と日数、作業の工数、計測する項目の数、実験の難易度で変わる、と書かれています。

どんな職種があるか

NeU の公式の採用ページと、ほかの会社の事例から見える職種を、仕事の中身ごとに整理します。

職種仕事の中身確かめた出典
ニューロマーケティング・コンサルタント要望のヒアリングから実験の提案、計測、解析、報告までを担う。業務担当者は、提案書と報告書の作成、計測の運営の支援、データ解析の支援、問い合わせ対応。アシスタントマネージャーは、これに加えてプロジェクト管理と案件活動の支援NeU 募集要項
計測装置・ソフトの開発(プロダクト)自社の携帯型脳活動計測デバイスと連携するソフトウェアの企画・設計・開発NeU 募集(テクニカルプロダクトマネージャー)
ブレインテックの営業・コンサルティング営業大学や企業の研究機関に、脳活動計測デバイスなどを提案する。顧客の研究課題に合わせた提案、学会や展示会への出展NeU 募集
事業開発・企画脳科学の知見にもとづくサービスを、企業や自治体に提案する。経営企画の募集もあるNeU 募集
研究の経歴から入る道研究職だけの募集は NeU の採用ページに見当たらない。コンサルタントの募集要項が、求める人の例に「心理学や脳科学などの研究者」を挙げ、仕事の中に実験の設計やデータ解析(Excel、R、MATLAB など)があるNeU 募集要項

出典: NeU のリクルートサイト(2026年11月5日に確認)。表の職種名は、募集の題を編集部が短くしたものです。

募集要項は、求めるスキルに、PowerPoint や Excel の基礎的なスキルと、脳神経科学、心理学、行動経済学などニューロマーケティング周辺領域の知識・興味を挙げています。そのうえで、「国内でも稀な領域となりますので、未経験者歓迎します。特に若年層は、ポテンシャル重視の採用です」と書いています。アシスタントマネージャーで「特に望ましい」経験には、マーケティングリサーチの専門知識、統計解析の基礎、コンサルティング営業の実務経験が挙がり、例として、広告代理店やコンサル会社の営業の経験者、メーカーのマーケティングやマーケティングリサーチ会社の経験者、心理学や脳科学の研究者を挙げています。

会社|NeU と、ほかの会社

ニューロマーケティングを事業にしている会社は、脳科学の会社、調査会社、商社など、出発点が違います。公式の情報で確かめられた範囲を書きます。

NeU(ニュー)

NeU は、東北大学加齢医学研究所(川島隆太研究室)の認知脳科学の知見と、日立グループの携帯型の脳計測技術を融合して、2017年8月に設立された会社です。公式サイトの沿革は、日立製作所の中央研究所が1995年に近赤外光による脳計測(光トポグラフィ)の研究を始めたこと、2009年に脳科学コンサルテーションのビジネスを始めたこと、2017年8月に東北大学と日立ハイテクなどの出資で NeU を設立したことを書いています。2025年12月には、倫理審査委員会を設置し、情報セキュリティの国際規格 ISO/IEC 27001:2022 の認証を取得した、とも書いています(NeU「会社情報」)。

事業は、NIRS のハードウェアとシステム、ニューロマーケティング、ブレインフィットネスの3つです。トップページの「主要実績」には、ウェアラブル脳計測デバイスの累計出庫台数が6,500台を超えたこと、設立以来の来場による試験が215件、脳計測試験の累計の計測人数が4,754名と書かれています。数字は会社の公表で、2026年11月5日に確認しました(NeU)。

NeUは、公式の採用ページで確かめた求人を会社ページに載せています。ニューロマーケティング・コンサルタントのほか、営業、プロダクト、事業開発、経営企画の募集があります。

ほかの会社

マクニカは、InnerEye 社の脳波計測の製品(InnerEye Sense Platform)を扱い、脳波測定を使った無料の実測体験や、導入・運用の支援を紹介しています。事例として、中高生向けの感情音を聴いた時の感情の分類や、オフィスワーク中の集中度・興味・疲労度の測定を挙げています(マクニカ。公開日はページに書かれていません)。

クロス・マーケティングは、上で書いたとおり2016年にセンタンとの提携で脳波を使った調査を発表しています。ただし、現在の公式のサービス一覧に脳波調査の項目があるかは確かめられませんでした。

ほかにも検索で見つかる会社はありますが、現在のサービスを公式の情報で確かめられなかったため、ここには書きません。応募や依頼の前に、各社の公式サイトで最新の事業を確かめてください。

ほかの脳科学の会社の全体像は脳科学・ブレインテックの会社一覧にまとめています。

本当に分かるのか|効果の確かさと限界

ニューロマーケティングの結果が、どこまで信用できるのかは、研究者の間でも議論が続いています。「脳を測れば消費者の本音がわかる」と言い切ることはできません。論文と公式の資料から、確かめられている点と、まだ難しい点を分けます。

論文で確かめられていること

論文内容(論文の要旨)
Ariely と Berns、Nature Reviews Neuroscience、2010年4月脳画像をマーケティングに使う動きの背景に、他の方法より安く速くなるかもしれないという期待と、従来の方法では得られない情報が得られるかもしれないという期待がある、と整理。脳画像が近い将来に安くなる可能性は低いが、消費者の体験について隠れた情報をもたらす証拠が増えている、と書く。最も有望な使い道は、商品がまだ発売される前、アイデアの段階だろう、としている
Falk ほか、Psychological Science、2012年5月禁煙の電話相談を促す3つのテレビキャンペーンを喫煙者が見ている時の脳の活動を記録。内側前頭前野の活動は、実際の相談の電話の増え方(集団の反応)を予測したが、本人の自己申告の評価は予測しなかった
Genevsky ほか、Psychological Science、2015年9月インターネット上の小口融資の依頼(1万3,500件のデータ)で、写真の肯定的な感情の特徴が成功を高めた。脳画像の参加者28人の側坐核の活動と、自己申告の肯定的な興奮は、ネット上での依頼の成功を、参加者自身の選択(貸すかどうか)の効果を超えて予測した

出典: 各論文の PubMed の要旨(2026年11月5日に確認)。Falk と Genevsky の研究は fMRI による脳画像の研究で、商用のサービスで使う脳波や近赤外光の装置とは測り方が違います。

この表のとおり、限られた条件では、自己申告より脳の活動のほうが集団の反応をよく予測した(Falk ほか)、脳の活動が参加者の選択を超えて市場の結果を予測した(Genevsky ほか)、という報告があります。ただし、これらの研究は一つの場面での結果で、すべての商品や広告にそのまま当てはまるとは限りません。

まだ難しいこと

  • 方法が統一されていない: 2019年の総説は、神経マーケティングの分野には論文・学位課程・会社が増えているが、研究は産業で使える、一つにまとまった方法も確かな結果にもまだ収束していない、と書いています。この総説は、脳波による好みの予測について、神経の指標が従来の指標に加えて予測の力を上げることを示す必要があると述べ、データサイエンスで標準の予測モデルの作法を使うべきだと提案しています(Hakim と Levy、WIREs Cogn Sci、2019年3月)。
  • 脳の活動から心を逆算する難しさ: 脳のある場所が活動したことから、特定の心の働きを推定する「逆推論」は、論理的に確実とは言えない、と2006年の論文は論じています。使うには、その場所の活動がどれだけその心の働きに特有かを確かめる必要があります(Poldrack、Trends Cogn Sci、2006年2月)。
  • 簡易な装置のデータの質: 日本総研の報告書は、ビジネスで想定されるイヤホンやヘッドバンドなどの簡易な装置は、脳活動由来の信号を捉える力が弱く、fMRI や医療用の脳波計に比べてデータの質が劣ること、生体信号は個人差や健康状態でも変わり、研究成果の再現性の低さが指摘されていること、日常やビジネスの場面では信号にノイズが入りやすいこと、非医療分野は明確なルールや基準が無いことが多く、科学的な根拠が乏しい製品が増える懸念があること、を挙げています(日本総研)。
  • 業界自身も限界を書く: NeU のコラムは、ニューロマーケティングは「依然として発展途上の分野」で、マーケティングのすべての疑問が解消されるわけではないとし、先行研究を調べ、関係者と仮説と検証内容を協議して、結果の期待値を適切に決めることが重要だと書いています。

内閣府のムーンショット型研究開発事業のプロジェクトがまとめた資料も、効果の読み方に注意を促しています。ATR・アラヤ・慶應義塾大学の「ブレイン・テック ガイドブック」は、一般向けに売られているブレインテック製品の分野の一つに「マーケティング」(デザインの評価、感情の推定)を挙げ、販売者が主張している効果は、有効性や安全性が科学的に証明されているか検証されていない、と注意しています。また、「効果が期待される」という標榜は、期待して作ったが実証はできていない、という意味でしかない場合がある、と書いています。このガイドブックは、企業向けの調査サービスではなく、一般に売られる製品が対象で、医療用・研究用の製品は対象外です(ATR の発表、2022年10月14日、ガイドブック本文(慶應義塾大学 KOARA))。

結論として、ニューロマーケティングの結果は、「商品が売れる」と保証するものではなく、アンケートなど他の調査と組み合わせて判断する材料です。この記事も、効果を断定しません。

倫理とデータ|同意・匿名化・脳の情報

脳や体の信号を集める仕事では、参加者を守る決まりが大切です。NeU のコラムは、生体計測データは個人情報の一部と見なされ、実験参加者からの同意の取得は必須で、実験中の負担を最小限にすることが重要だと書いています。NeU の取り組みとして、生体計測データと個人情報を分けて匿名化し、個人と結びつかない数値として扱い、統計的に処理したデータだけを全体の結果に使うこと、実験計画を事前に外部の倫理審査委員会に出して承認を得ることが有用なこと、を挙げています。会社情報は、2025年12月に倫理審査委員会を設置し、研究倫理と研究参加者保護の体制を強めた、としています(NeU のコラム、NeU「会社情報」)。

国際的には、ユネスコの公式ページが、脳のデータは「もっとも私的な考え」を明らかにしうるので、神経技術による収集は不正なアクセスや悪用から厳しく守られるべきだと書き、企業が非侵襲の機器で得た神経データを、行動に影響を与えて利益を得るために使いうることに警告しています。AI と組み合わせると「認知の偏りを悪用し、同意なしに反応や感情を引き起こす」可能性も指摘しています(UNESCO「Ethics of neurotechnology」)。

日本総研の報告書は、ユネスコが2025年11月にブレインテックの倫理の枠組みを採択したこと、国際機関の勧告には法的な拘束力が無いことを挙げています。同じ報告書は、EU の AI 法(2024年発効)は、職場や教育機関で個人の感情を推測することを、医療や安全上の理由がある場合を除いて「許容できないリスク」として原則禁止としており、日本企業も域外適用で対象になる可能性がある、とも書いています。マーケティングの調査で脳や体の信号を扱う会社にとって、同意・匿名化・倫理審査の体制と、各国の法の動きを追う仕事は、これからも重要になります。

この仕事に就くには|掲載中の募集

ニューロマーケティングの仕事は、日本ではまだ募集が多くない分野です。公式の採用ページで確かめた、当サイト掲載中の募集を紹介します。募集は変わるので、応募の前に各社の公式ページで最新を確かめてください。

ニューロマーケティング

  • ニューロマーケティング・コンサルタント: 大手企業の商品開発の支援、広告クリエイティブの評価、購買行動の分析を行う仕事です。要望のヒアリング、実験デザインの提案、計測、解析、報告までを担当します。勤務地は東京都千代田区神田司町(NeU 本社)です。

計測デバイスとブレインテックの営業・開発

脳波の計測と解析の側からは、BCI の研究を支える仕事もあります。

どの職種が自分に合うかは、経験によって変わります。NeU の募集要項の条件を見ると、マーケティングリサーチや広告・コンサルの営業の経験を生かす道と、心理学・脳科学の研究や統計解析の経験を生かす道があることが分かります。どちらも未経験から入れる、とは限りません。条件は各募集の本文で確かめてください。

職種ごとの求人は、事業開発・営業・コンサル、脳波計測・実験技術、エンジニア・プロダクト開発の一覧で見られます。仕事全体は脳科学の仕事・就職先にまとめています。

出典

すべて2026年11月5日に開いて確かめました。数字は各社・各機関が公表したもので、当サイトが測定したものではありません。

確かめられなかったこと: 日本総研の報告書のうち、ニューロマーケティングを個別に論じた部分は、図と事例の一覧にとどまり、定義や市場の数字は確かめられませんでした。マクニカのページに公開日の記載はありません。クロス・マーケティングほか各社の現在のサービスは、公式の情報を確かめられていません。EU の AI 法の条文(EUR-Lex)は自動の取得を受け付けず開けなかったため、EU の AI 法の記述は日本総研の報告書によります。ブレイン・テック ガイドブックは一般向けの製品を対象とし、企業向けの調査サービスの評価ではありません。商用サービスの結果が商品の売れ行きを予測する程度は、査読論文では確かめられませんでした。NeU の事例の結果の数字は、公表されていません。