研究・開発向けの脳波計とは|ひとことで
脳波計(EEG)は、頭の皮膚の上から脳の電気の活動を測る機器です。BCI(ブレイン・コンピューター・インターフェース)の研究・開発では、病院で使う医療機器の脳波計とは別に、研究用・開発用・個人用として売られている、持ち運べる脳波の機器がよく使われます。ヘッドバンド・ヘッドセット・キャップ・イヤホン・ヘッドホン・基板など、形もさまざまです。研究所で使われる据え置き型の湿式の研究用脳波計(g.tec・Brain Products・ANT Neuro・BioSemi など)は見積もりの機種が多いため、この記事では扱わず、手に入りやすい機種を比べます。
この記事では、研究・開発で名前の挙がる12機種(Muse・Emotiv・OpenBCI・Neurable・VIE・NeuroSky)を、各社の公式の仕様・開発者の文書・公式ストアの表示で比べます。値段・仕様は2026年11月5日に確かめた値で、公式どうしで食い違う値は両方を書きます。あわせて、日本で使う時に必ずぶつかる「医療機器との線引き」と「技適(電波法)」を、厚生労働省・総務省の資料と、BCIジョブ編集部が PMDA(医薬品医療機器総合機構)の検索で引いた結果で整理します。
ソフトの側(Apple の BCI 対応、各社の SDK、BrainFlow・MNE-Python などのライセンス、手元で動かした結果)はBCI・脳波のアプリと SDK のまとめに分けました。BCI の全体像はBCI とはで解説しています。
この記事は、病気の診断・治療・予防や効果をうたいません
比べる機器の多くは、メーカーが「医療機器ではない」「病気の診断・治療を目的としない」と書いている物です。集中・瞑想・睡眠の記録などの使い方の良し悪しや、健康への効果は扱いません。病気の診断・治療に使う時は、医療機器として承認・認証を受けた脳波計を選び、医療機関に相談してください。
研究・開発向けの脳波計の選び方|6つの軸
脳波計の仕様の表は項目が多く、見比べにくいのが難点です。研究・開発の目的で選ぶ時に、結果を一番左右する6つの軸を先に整理します。
1 チャンネル数と測る場所
チャンネル数は、頭の何か所で同時に測るかです。今回の機種では、1ch(NeuroSky MindWave・VIE の研究用ヘッドホン)から、4ch(Muse・OpenBCI Ganglion)、5ch(Emotiv Insight)、8ch・16ch(OpenBCI Cyton・Cyton+Daisy)、14ch(Emotiv EPOC X)、最大32ch(Emotiv EPOC Flex 2)まで幅があります。脳のどの場所の活動を見たいか(前頭・側頭・頭頂・後頭)で、必要なチャンネルの数と位置が決まります。Muse 2 は TP9・AF7・AF8・TP10 の4か所と、機種ごとに測れる場所も決まっています。
2 電極の種類(乾式・湿式・耳の中)
電極は、信号の質と準備の手間を分けます。乾式(そのまま当てる)は着けるのが速く、湿式(生理食塩水やジェルで濡らす)は準備に手間がかかるかわりに、皮膚との接触が安定しやすいのが一般的な違いです。Emotiv は EPOC X に生理食塩水のフェルト、Insight に半乾式のポリマー、EPOC Flex 2 に生理食塩水版と Ag/AgCl のジェル版を用意しています(Emotiv の機種の比較)。耳の中の電極で測るイヤホン型(Emotiv MN8・VIE)は、着けやすさと引き換えに測れる場所が耳の周りに限られます。
3 サンプリング周波数とビット数
サンプリング周波数は、1秒に何回測るかです。今回の機種は 125Hz(OpenBCI Cyton+Daisy の16ch の時)から 600Hz(VIE のイヤホン)まであり、多くは 200〜256Hz です。脳波の解析でよく使う帯域(数 Hz〜数十 Hz)を扱うには、扱いたい一番高い周波数の2倍より十分に高いサンプリング周波数が要ります。ビット数(分解能)は、OpenBCI の基板が 24bit、Muse S Athena が 14bit、Muse S(Gen 2)が 12bit と公式が書いています。
4 生の脳波(raw EEG)を読めるか
研究・開発では、メーカーのアプリが出す「集中度」などの指標ではなく、生の脳波を自分のプログラムで読めるかが決定的です。OpenBCI は標準で読め、Muse は SDK の申込が要り、Emotiv の EPOC X・EPOC Flex 2 は有料の開発者ライセンスか記録のソフト EmotivPRO の上位のプランが要る、と各社の文書が書いています(Emotiv Cortex API・Muse 開発者ページ・OpenBCI 開発者の文書)。
5 商用で使う条件
研究が製品やサービスにつながる時に効くのが、商用の条件です。Muse は商用ライセンスの申請、Emotiv は「利用者1,000人未満かつ売上25万ドル未満は無料」で、どちらかを超えたら相談、超えた後は Emotiv の製品に直接結びつく売上に20%のロイヤルティ(Emotiv 開発者ページ)、OpenBCI のソフトは MIT ライセンスです。Neurable・VIE の開発者向けの条件は非公開(申請・問い合わせ)です。ソフトのライセンスの細目はアプリと SDK の記事にまとめました。
6 日本で買えるか・使えるか
海外の機器は、国内に正規の販売元があるか、日本へ送ってくれるかに加えて、無線(Bluetooth)を使う機器を日本で使ってよいか(技適)が関わります。さらに、医療機器に当たる物か当たらない物かで、売る・貸す側の決まりが変わります。この2つは後の節で詳しく扱います。
脳波計の比較表(12機種)
下の2つの表は、BCIジョブの機器の台帳(各社の公式で確かめた値)から出しています。表1は機器そのもの、表2はソフトと条件です。表は横にスクロールできます。
| 機種 | 形 | 脳波のチャンネル | サンプリング | 電極 | 公式の値段(見た日 2026-11-05) | リンク |
|---|---|---|---|---|---|---|
| Muse 2Interaxon(Muse) | ヘッドバンド | 4ch(TP9・AF7・AF8・TP10)+補助 2ch | 256Hz | 乾式(販売店の案内) | 249.99 米ドル(公式の国際ストア) | 公式 開発者向けの資料 レンタル |
| Muse S(Gen 2)Interaxon(Muse) | 布のヘッドバンド(寝転んでも着けやすい) | 4ch+補助 2ch(12bit) | 公式の値は未確認 | 乾式(公式の明記は未取得) | 公式の値段は未確認(公式の一括購入のページに 6 個のセットあり) | 公式 開発者向けの資料 |
| Muse S AthenaInteraxon(Muse) | ヘッドバンド(脳波+fNIRS) | 4ch+補助 4ch(14bit) | 256Hz(BrainFlow の文書) | 未確認(公式の製品ページを開けず) | 474.99 米ドルから(公式の製品ページ・公式ブログ) | 公式 開発者向けの資料 |
| Emotiv InsightEmotiv | ヘッドバンド(軽量) | 5ch(+参照 2) | 128 SPS(内部 2048Hz) | 半乾式のポリマー | 499 ドル(公式の比較ページ) | 公式 開発者向けの資料 |
| Emotiv EPOC XEmotiv | ヘッドセット | 14ch(+参照 2) | 128 / 256Hz(内部 2048Hz) | 生理食塩水のフェルト(湿式) | 999 ドルと 1,199 ドルの表示が公式の中で食い違う | 公式 開発者向けの資料 |
| Emotiv EPOC Flex 2Emotiv | キャップ(生理食塩水版とジェル版) | 最大 32ch(+参照 2) | 256 SPS(内部 2048Hz) | 生理食塩水、または Ag/AgCl とジェル | 2,399 ドル(比較ページ)。別のページは 1,899 ドル〜(食い違い) | 公式 開発者向けの資料 |
| Emotiv MN8Emotiv | イヤホン(耳の中の電極) | 2ch | 公式に記載なし | 耳の中のセンサー(ジェル不要) | 399 ドル(公式ブログ) | 公式 開発者向けの資料 |
| OpenBCI GanglionOpenBCI | 基板(電極・頭に着ける枠は別) | 4ch(24bit) | 200Hz | 付属なし(乾式・湿式を後から選ぶ) | 624.99 米ドル(売り切れの表示・別のページは 499 ドル) | 公式 開発者向けの資料 |
| OpenBCI Cyton(+Daisy)OpenBCI | 基板(Daisy を重ねて 16ch。頭の枠 Ultracortex は別売) | 8ch(Daisy 付きで 16ch・24bit) | 250Hz(16ch の時 125Hz) | 付属なし(Ultracortex は乾式のくし形電極を推奨) | 8ch 1,249 米ドル・16ch 2,499 米ドル(どちらも売り切れの表示・別のページは 999/1,999 ドル) | 公式 開発者向けの資料 |
| Neurable One/MW75 NeuroNeurable(MW75 Neuro は Master & Dynamic と共同) | ノイズキャンセリングのヘッドホン | 乾式センサー 12 個(左右 6) | 帯域 125Hz(研究キットは 12ch・500Hz と販売元の案内) | 乾式(販売元の案内) | Neurable One が 499 ドル(公式)。研究キットは見積もり | 公式 開発者向けの資料 |
| VIE EEG Earphone/HeadphoneVIE株式会社 | イヤホン(耳の中の電極)。研究用はヘッドホン型 | イヤホン 2ch(左右の耳)・研究用ヘッドホン 1ch(Cz) | イヤホン 600Hz・研究用 500Hz(1ページに2製品が並ぶため割り当ては推定) | 耳の中に入れる電極 | イヤホン 49,800 円(税込)から。研究用は見積もり(大学・公的研究機関の価格あり) | 公式 開発者向けの資料 |
| NeuroSky MindWave Mobile 2NeuroSky | ヘッドセット(額のセンサー+耳のクリップ) | 1ch(FP1) | 512Hz(12bit) | 公式に「乾式」の明記なし | 公式ストアは値段を出さず Amazon へ案内。米国の販売店は取扱終了の表示 | 公式 開発者向けの資料 |
| 機種 | 生の脳波の取り方 | SDK・API | 商用で使う条件 | 日本での入手 |
|---|---|---|---|---|
| Muse 2Interaxon(Muse) | Muse の SDK(申請制)。アプリの書き出しにも脳波が入る(レンタル店の案内) | Muse SDK(iOS・Android・Windows・macOS)。BrainFlow も対応 | 個人・試作・研究の探索は可。商用は商用ライセンスの申請が必要(公式の開発者ページ) | 国内に正規の販売代理店あり(代理店の発表)。rentio で月額のレンタルあり |
| Muse S(Gen 2)Interaxon(Muse) | Muse の SDK(申請制)。BrainFlow が対応 | Muse SDK | Muse 2 と同じ(商用は申請) | 国内で正規に販売(代理店の 2024-04-08 の発表・技適 R 218-240295) |
| Muse S AthenaInteraxon(Muse) | Muse の SDK(申請制)。BrainFlow が対応 | Muse SDK | Muse 2 と同じ(商用は申請) | 国内の正規販売は未確認 |
| Emotiv InsightEmotiv | Cortex API。消費者向けの機種は開発者の SDK・API ですべてのデータに触れる(Cortex の文書) | Cortex API(JSON・WebSocket=言語を選ばない)。EmotivPRO(記録・解析・有料) | 利用者 1,000 人未満かつ売上 25 万ドル未満は無料。超えたら相談で、基準を超えた後の Emotiv の製品に直接結びつく売上に 20%(公式の開発者ページ) | 公式ストアは世界へ送料無料と案内。国内の販売店が見積もりで扱う |
| Emotiv EPOC XEmotiv | Cortex API の Basic は無料。生の脳波は Premium(有料の開発者ライセンス)か EmotivPRO | Cortex API・EmotivPRO・Emotiv Launcher(macOS・Windows ほか) | Insight と同じ(1,000 人・25 万ドル未満は無料・超えたら相談・20%) | 公式ストアは世界へ送料無料と案内。国内の販売店に参考税込 220,000 円の表示あり |
| Emotiv EPOC Flex 2Emotiv | EPOC X と同じ(Premium か EmotivPRO) | Cortex API・EmotivPRO | Insight と同じ | 国内の輸入専門店が掲載(正規の販売元かは未確認) |
| Emotiv MN8Emotiv | Cortex API(消費者向けの機種の扱い)。Raspberry Pi では使えない | Cortex API・Emotiv App | Insight と同じ | 国内の取扱は未確認 |
| OpenBCI GanglionOpenBCI | 標準で生のデータ(ライセンス不要) | BrainFlow(Python・C++・Java・C#・R・MATLAB ほか)・OpenBCI GUI | ソフトは MIT(商用可) | 米国から世界へ発送(関税・通関の費用は買う人)。国内にも販売店あり(販売店の自己申告) |
| OpenBCI Cyton(+Daisy)OpenBCI | 標準で生のデータ(ライセンス不要) | BrainFlow・OpenBCI GUI(MIT) | ソフトは MIT(商用可)。基板は「医療機器ではない」とした上で現状のまま販売(公式の店) | Ganglion と同じ(米国から発送・国内にも販売店あり) |
| Neurable One/MW75 NeuroNeurable(MW75 Neuro は Master & Dynamic と共同) | 開発キット(申請→用途の確認→キットと API)。条件は非公開 | SDK の名前・対応言語は公式に記載なし | 非公開(申請制) | 国内の正規販売は見つからず。研究キットは海外の販売元が見積もり |
| VIE EEG Earphone/HeadphoneVIE株式会社 | VIE Streamer(PC)で CSV・EDF に書き出し。LSL・OSC に対応 | VIE Lab SDK tools(問い合わせ)。MNE-Python・EEGLAB で解析できると案内 | 非公開(問い合わせ) | 国内のメーカーの直販 |
| NeuroSky MindWave Mobile 2NeuroSky | 生の脳波を出力(公式の仕様) | Developer Tools(PC・Mac・Android・iOS・Arduino・Unity) | 自社の店の外でも販売してよい(取り分の率は書いていない) | 国内の販売店の例は「取扱停止」の表示 |
値段・在庫・条件は各社の公式の表示で、変わることがあります。公式どうしで食い違う値は両方を書きました。「未確認」は公式で確かめられなかった値です。リンクはメーカーとレンタル店の公式のページです。記事のリンクに紹介料の付くものはありません。見積もりの取次(運営会社のサービス)では、販売元・代理店から手数料を受け取ることがあります。
値段は、メーカーの公式ストアの表示通貨のままです。Emotiv は同じ機種でも公式のページによって値段が違い(EPOC X は 999 ドルと 1,199 ドル)、OpenBCI の店は2026年11月5日に多くの基板が売り切れの表示でした。見積もりや購入の前に、必ずその時点の公式の値段と在庫を確かめてください。
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表だけでは分からない、メーカーごとの考え方の違いをまとめます。
Muse(Interaxon・カナダ)|手軽な4ch のヘッドバンド
Muse は、瞑想と睡眠の記録のアプリと組み合わせた、乾式4ch のヘッドバンドです。Muse 2 は 249.99 米ドル(公式の国際ストア)、布のバンドで寝ながらでも着けやすい Muse S(Gen 2)、脳波に加えて fNIRS(近赤外の光で、脳の血液の酸素化ヘモグロビンの変化を測る)も測る Muse S Athena(474.99 米ドルから・2025年3月発売)があります(Muse 公式ブログ)。SDK は試作・個人の探索は可で、商用は申請制です(開発者ページ)。オープンソースの BrainFlow が Muse 2・Muse S・Muse S Athena に対応しているので、研究では BrainFlow から読む使い方もできます(BrainFlow の対応機器)。
国内では、正規の販売代理店が Muse 2 と Muse S を「医療機器ではありません」と明記して販売しています(代理店の発表・2024年4月8日)。メーカーもサイト共通の注記で、一般のウェルネス製品で医療機器ではないと書いています(Muse)。レンタルの rentio は、Muse 2 を月4,800円で貸しています(最低3か月・rentio Muse 2)。
Emotiv(米国)|2ch から32ch まで研究向けに幅広い
Emotiv は、研究・個人用の脳波の機器を幅広くそろえる会社です。軽い5ch のヘッドバンド Insight(499 ドル)、14ch のヘッドセット EPOC X、最大32ch のキャップ EPOC Flex 2、耳の中で測る2ch のイヤホン MN8(399 ドル)があります(機種の比較)。開発者向けには Cortex API(JSON と WebSocket)があり、生の脳波は機種と契約で条件が分かれます(Cortex API の文書)。公式ストアは、公式サイトから直接買う場合は世界へ送料無料と案内し、通関で最大14営業日かかるとしています(Emotiv の値段の案内)。
各製品ページには、日本語版も含めて「Emotiv 製品は研究用途および個人使用のみを目的としています」「疾患の診断または治療に使用することを目的として設計または意図されていません」と書かれています(EPOC X 日本語版)。
OpenBCI(米国)|基板から組むオープンな機器
OpenBCI は、脳波を測る基板(4ch の Ganglion・8ch の Cyton・Daisy を重ねて16ch)と、3D プリントの頭の枠 Ultracortex Mark IV を、組み合わせて使う研究・開発者向けの機器です。基板は 24bit で、電極は付属せず、乾式・湿式を後から選びます(Cyton・Ganglion・Ultracortex)。ソフト(OpenBCI GUI・BrainFlow)は MIT ライセンスで、生のデータを標準で読めます。
公式の店は、各基板を「医療機器ではなく、医療の診断を目的としない」「技術の開発・デモ・評価のための物」として、現状のまま売ると書いています。関税・輸入税・通関の手数料は買う人の負担です。2026年11月5日には、Cyton・Cyton+Daisy・Ganglion・Ultracortex が売り切れの表示で、値段も店の中で食い違っていました。
VIE(日本)|耳で測るイヤホンと研究用のヘッドホン
VIE は、日本のメーカーです。耳の中の電極で測るイヤホン(49,800円〈税込〉から)と、研究用のヘッドホン(1ch・500Hz・見積もり)を出し、計測のアプリ VIE Streamer から CSV・EDF への書き出しと、LSL・OSC での配信ができると案内しています(VIE EEG Headphone)。研究用のページには「本製品は研究用機器です。診断に用いることはできません」と書かれ、旧製品のイヤホン(VIE ZONE chill)のページにも「医薬品医療機器等法の製造販売承認を得ておりません」と日本語で書かれています(旧製品のページ)。大学・公的研究機関の価格があるのも、研究で使う時の特徴です。
Neurable・NeuroSky
Neurable は、ノイズキャンセリングのヘッドホンの耳あてに乾式センサー12個を入れた機器(Master & Dynamic と共同の MW75 Neuro、自社の Neurable One〈499 ドル〉)を出しています。製品ページは「医療機器ではない」と書いています(Neurable One)。ただし、2026年10月30日に改定された利用規約は、サービス(アプリ)を「米国に住む個人だけ」が使えると書いています(利用規約・2026年11月30日発効)。日本の研究所・会社で使う時は、この点を先に確かめる必要があります。
NeuroSky の MindWave Mobile 2 は、額の1ch で測る機器で、生の脳波(512Hz)を出せます(MindWave)。公式ストアは値段を出さず、米国の販売店では取扱終了の表示、国内の販売店の例では取扱停止の表示でした。今から研究用に新しくそろえるなら、手に入るかを先に確かめる必要があります。
目的ごとの選び方の目安
どの機種が「一番よい」かは、測りたいことで変わります。下の表は、公式の仕様から言える範囲の目安で、効果や性能の優劣を示すものではありません。
| 目的 | 見る軸 | 候補になりやすい機種(仕様から) |
|---|---|---|
| 頭の多くの場所で測る研究(事象関連電位など) | チャンネル数・電極の位置・湿式 | Emotiv EPOC Flex 2(最大32ch)・OpenBCI Cyton+Daisy(16ch)・Emotiv EPOC X(14ch) |
| アプリ・サービスの試作(少ない人数で早く試す) | 着けやすさ・SDK・商用の条件 | Muse 2・Muse S(Gen 2)・Emotiv Insight |
| 道具を全部オープンにしたい・自作の電極を試したい | 生のデータ・ライセンス | OpenBCI Ganglion・Cyton(MIT のソフト・電極は後から選ぶ) |
| 日常に近い場面で、耳で手軽に測る | 形・着けやすさ | VIE のイヤホン・研究用ヘッドホン |
| 国内のメーカーと、日本語で研究の相談をしたい | 国内の窓口・研究機関の価格 | VIE(研究用の価格あり) |
どの目的でも、機器を買う前に、機器が無くても試せる BrainFlow の合成ボードで取得と解析のプログラムを書いておくと、届いてからの立ち上がりが早くなります(BCIジョブ編集部が手元で動かした手順はアプリと SDK の記事に載せました)。
医療機器との線引き|日本で売る・使う時の決まり
脳波計は、病院で使えば「医療機器」です。一方で、この記事で比べた機器の多くは、メーカーが「医療機器ではない」と書いて売っています。同じ「脳波を測る」機器が、どこで線を引かれるのかを、日本の決まりで整理します。
決め手は「表示・広告から読める使い道」
厚生労働省の「プログラムの医療機器該当性に関するガイドライン」は、医療機器に当たるかを、表示・説明資料・広告などから読める使用目的と、リスクの程度で判断するとしています。医療機器に当たらない例として、疾病の診断や病態の把握、疾病の兆候の検出を目的としていない物を挙げています(厚生労働省のガイドライン・PMDA 掲載)。ガイドラインはプログラム(ソフト)についての文書ですが、「何をうたって売るか」で線が動く、という考え方は機器を扱う時にも大事な手がかりです。
つまり、同じ機器でも、売る人・紹介する人が「病気がわかる」「治る」「病気を防ぐ」とうたえば、医療機器と思わせる表示になり、薬機法 68 条(承認・認証を受けていない医療機器の広告の禁止)にふれるおそれが出ます。この記事が病名や効果を書かないのはそのためです。
研究用と医療用の脳波計は、別の製品として売られている
国内の脳波計のメーカーには、研究用と医療用を分けて売っている会社があります。たとえばミユキ技研は、製品の一覧を「研究用」と「臨床用」に分け、臨床用の側にだけ医療機器の認証番号を載せています(ミユキ技研 ポリメイト)。都道府県の案内は、脳波計を管理医療機器の例に挙げ、特定保守管理医療機器を売る・貸すには許可が要るとしています(長野県 医療機器の分類と手続き)。管理医療機器の販売業・貸与業は届出が要ります(薬機法39条の3)。
研究の目的でも、測った結果を診断に使う(例: 病院で患者の病気を判断する)なら、研究用の機器ではなく医療機器の脳波計を選ぶ必要があります。研究用の機器は、研究の計画(倫理審査・参加者の同意)の中で、診断ではない目的で使う物です。
比べた機種の判定(PMDA の検索とメーカーの原文)
BCIジョブ編集部は2026年11月5日に、PMDA の「医療機器 情報検索」で、各機種の名前とメーカー名(製造販売業者・海外の製造所)を引きました(PMDA 医療機器 情報検索)。検索が効いていることは、「脳波計」で37件、国内の脳波計のメーカー名で36件が出ることで確かめています。比べた12機種は、どれも該当がありませんでした。そのうえで、メーカーの原文が「医療機器ではない」と書いているか、宣伝が病気の診断・治療をうたっていないかを確かめ、BCIジョブの見積もりの取次の対象を決めました。
| 機種 | 医療機器の扱い(日本) | 技適(電波法) | 見積もりの取次 | 出典 |
|---|---|---|---|---|
| Muse 2Interaxon(Muse) | PMDA の検索に無し。国内の正規販売代理店が「医療機器ではありません」と明記。メーカーは「一般のウェルネス製品で医療機器ではない」と書く | 未確認(見積もりの時に販売元に確かめる) | 対象(PMDA の検索に無く、医療機器でないとの明記を確かめた) | PMDA 医療機器の情報検索(該当なし・2026-11-05) Muse 開発者ページ Muse(サイト共通の注記: 一般のウェルネス製品で医療機器ではない) |
| Muse S(Gen 2)Interaxon(Muse) | PMDA の検索に無し。国内の正規販売代理店が「医療機器ではありません」と明記して販売 | R 218-240295(国内の正規販売代理店の発表) | 対象(PMDA の検索に無く、医療機器でないとの明記を確かめた) | Muse(サイト共通の注記: 一般のウェルネス製品で医療機器ではない) Muse 公式ブログ(Athena と Muse S Gen 2 の比較) |
| Muse S AthenaInteraxon(Muse) | PMDA の検索に無し。メーカーはウェルネス製品と書くが、発表に病気の兆しの検出や診断に触れる表現がある。国内の正規販売元は未確認 | 未確認(見積もりの時に販売元に確かめる) | 対象外(発表に診断に触れる表現・国内の販売元も未確認) | Muse 公式ブログ(Athena と Muse S Gen 2 の比較) BrainFlow 対応機器 |
| Emotiv InsightEmotiv | PMDA の検索に無し。メーカーは「研究用と個人用で、病気の診断・治療を目的としない」と日本語でも明記 | 未確認(見積もりの時に販売元に確かめる) | 対象(PMDA の検索に無く、医療機器でないとの明記を確かめた) | Insight(研究用と個人用の注記) Emotiv 機種の比較 Emotiv 開発者ページ |
| Emotiv EPOC XEmotiv | PMDA の検索に無し。メーカーは「研究用と個人用で、病気の診断・治療を目的としない」と日本語でも明記 | 未確認(見積もりの時に販売元に確かめる) | 対象(PMDA の検索に無く、医療機器でないとの明記を確かめた) | EPOC X(日本語・研究用と個人用の注記) EPOC X 製品ページ Cortex API の文書 |
| Emotiv EPOC Flex 2Emotiv | PMDA の検索に無し。メーカーは「研究用と個人用で、病気の診断・治療を目的としない」と明記 | 未確認(見積もりの時に販売元に確かめる) | 対象(PMDA の検索に無く、医療機器でないとの明記を確かめた) | Flex(研究用と個人用の注記) Emotiv 機種の比較 |
| Emotiv MN8Emotiv | PMDA の検索に無し。メーカーは研究用・個人用と書くが、日本語の製品ページに病気に近い表現がある | 未確認(見積もりの時に販売元に確かめる) | 対象外(製品ページに病気に近い表現) | MN8(日本語の製品ページ) MN8 製品ページ |
| OpenBCI GanglionOpenBCI | PMDA の検索に無し。公式の店が「医療機器ではなく、医療の診断を目的としない」「開発・評価用」と明記 | 未確認(見積もりの時に販売元に確かめる) | 対象(PMDA の検索に無く、医療機器でないとの明記を確かめた・研究・開発用に限る) | OpenBCI 店(Ganglion) Ganglion のデータの形式 |
| OpenBCI Cyton(+Daisy)OpenBCI | PMDA の検索に無し。公式の店が「医療機器ではなく、医療の診断を目的としない」「開発・評価用」と明記 | 未確認(見積もりの時に販売元に確かめる) | 対象(PMDA の検索に無く、医療機器でないとの明記を確かめた・研究・開発用に限る) | OpenBCI 店(Cyton) OpenBCI 店(Cyton+Daisy) OpenBCI 開発者の文書 |
| Neurable One/MW75 NeuroNeurable(MW75 Neuro は Master & Dynamic と共同) | PMDA の検索に無し。メーカーは「医療機器ではない・ウェルネス製品」と明記。ただしアプリの利用規約は米国の居住者だけが対象(2026-11-30 発効) | 未確認(見積もりの時に販売元に確かめる) | 対象外(アプリが米国の居住者だけ) | Neurable の利用規約 Neurable One 製品ページ Neurable 開発キット |
| VIE EEG Earphone/HeadphoneVIE株式会社 | PMDA の検索に無し。研究用ヘッドホンのページに「研究用機器です。診断に用いることはできません」、旧製品のイヤホンのページに「医薬品医療機器等法の製造販売承認を得ておりません」と日本語で明記 | 未確認(見積もりの時に販売元に確かめる) | 対象(PMDA の検索に無く、医療機器でないとの明記を確かめた) | 旧製品 VIE ZONE chill のページ(承認を得ていない旨) VIE EEG Headphone のページ |
| NeuroSky MindWave Mobile 2NeuroSky | PMDA の検索に無し。メーカーのサポート記事(2013年・機種名なし)が「医療機器ではない」と書くだけで根拠が弱い | 未確認(見積もりの時に販売元に確かめる) | 対象外(根拠が弱く、国内の販売店も取扱停止) | NeuroSky のサポート記事(2013年) MindWave のページ |
PMDA の検索は、公開されている添付文書(注意事項等情報)の検索です。届出・認証のすべてを網羅した台帳ではないので、「検索に無い」は「医療機器として添付文書を公開していない」という意味で読んでください。メーカーの原文は各機種の出典のリンクから確かめられます。
取次の対象外にしたのは、メーカーの発表に病気の兆しの検出や診断に触れる表現がある機種(Muse S Athena)、日本語の製品ページに病気に近い表現がある機種(Emotiv MN8)、アプリが米国の居住者だけの機種(Neurable)、医療機器でないとする根拠が機種名のない2013年の記事だけで、国内の取扱も止まっている機種(NeuroSky)です。機器そのものが医療機器だと判断したわけではありません。宣伝の言葉や販売の状況が変わったら、判定を見直します。
米国の「一般ウェルネス」
米国の FDA は、体に低いリスクしかなく、健康な生活の維持だけをうたう製品を「一般ウェルネス」として、医療機器の規制の対象にしない方針を示しています(FDA General Wellness 指針・2026年1月)。Muse や Neurable は、自社の製品を「一般のウェルネス製品で、医療機器ではない」と書いています。ただし、これは米国の考え方で、日本の薬機法の判断とは別です。日本で売る・紹介する時は、日本の決まりで考えます。
日本での入手と技適(電波法)
今回の機器は、ほとんどが Bluetooth で端末とつながります。日本で無線の機器を使うには、原則として、技術基準に合うと認められた印(技適)が要ります。
技適と、実験のための特例
国内の正規の販売代理店は、Muse S を技適(R 218-240295)を取って販売していると発表しています(代理店の発表・2024年4月8日)。ほかの機種は、2026年11月5日に編集部が確かめた範囲では技適の番号を確かめられませんでした。海外から直接買う時は、販売元に技適の有無を確かめてください。
技適の無い Wi-Fi・Bluetooth の機器でも、電波法の技術基準に相当する基準に合っていれば、総務大臣への届出をすることで、届出の日から最長180日、実験などの目的で使える特例があります(総務省 電波法の改正の概要)。内閣府の規制改革の会議の資料(2026年3月19日)には、180日では実験が終わらないという事業者の声と、期間の延長を求める意見が載っています(規制改革推進会議 ワーキング・グループ資料)。長く使う研究では、技適のある機種か、国内の正規品を選ぶのが確実です。
買い方・借り方
- 海外の公式ストアから買う: Emotiv は公式サイトから世界へ送料無料、OpenBCI は米国から発送で関税・輸入税・通関の手数料は買う人の負担と案内しています。
- 国内の販売店から買う: Muse・Emotiv・OpenBCI は国内にも販売店があり、法人の見積もりに応じる店もあります。正規の代理店かどうかは、メーカーが販売店の一覧を出していない場合が多く、販売店の自己申告で確かめることになります。
- 国内のメーカーから買う: VIE は国内のメーカーの直販で、研究用は見積もりです。
- 借りる: rentio が Muse 2 を月額で貸しています。ほかのメーカーの研究用の機器のレンタルは、2026年11月5日に確かめた範囲では見つかりませんでした。
研究で使う時の、脳のデータの扱い
脳波は、使う人の状態を映すデータです。研究で使う時は、研究の倫理審査と参加者の同意の中で、何を測り、どこに保存し、誰と共有するかを決めます。メーカーのクラウドやソフトにデータを送る機種では、その会社の規約がデータの扱いを決めます。たとえば EmotivPRO は、Enterprise 以外のプラン(無料の Lite も含む)に「データがモデルの学習に使われることがある」と公式に書いています(詳しくはアプリと SDK の記事)。
国内の大学・研究機関で人の脳波を測る研究は、各機関の倫理審査委員会の審査を受け、国の「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」の対象になるかを確かめます(厚生労働省 研究に関する指針)。脳波のデータが個人情報保護法でどう扱われるかについて、国の公式の解釈は2026年11月5日に確かめた範囲では見つかりませんでした。
海外では、米国コロラド州が神経のデータを機微なデータとして集める時に同意を求める法律を作り(コロラド州議会 HB24-1058)、ユネスコが2025年11月にニューロテクノロジーの倫理の勧告を採択しました(UNESCO)。海外の参加者のデータを扱う研究では、その国の決まりも確かめます。
法人・研究機関の見積もり|BCIジョブの取次
BCIジョブを運営する ASI株式会社は、法人・研究機関の方向けに、研究・開発に使う脳波の機器の見積もりを、販売元・代理店から取り寄せてご案内しています(運営会社のサービス)。
- 取り次ぐのは、上の表3で「対象」とした機種(PMDA の検索に無く、メーカーなどが医療機器でないと明記していることを確かめた機種)だけです。
- 技適(電波法)の有無は、見積もりの時に販売元に確かめてご案内します。
- 海外の販売元から見積もりを取る時は、会社名・お名前などの個人情報は渡さず、機種・台数・お届け先の都道府県だけを伝えます。
- 在庫は持たず、値段・納期は見積もりの時にご案内します。脳波などの計測データはお預かりしません。
- 病院での診断・治療など、医療の目的でのご利用はお受けしていません。
- 機種が決まっていない時は、チャンネル数・SDK・商用の条件から候補をご案内します。
脳波の計測に関わる仕事
この記事の機器は、BCI・脳の技術の会社や研究機関の仕事の現場で使われています。脳波の計測の実験、データの解析、機器と連携するソフトの開発などの募集があります。いま当サイトに掲載中の例です(掲載が終わった求人は表示されません)。
- [R&D]脳波計測 実験テクニカルスタッフ(契約社員)(東京都千代田区(秋葉原駅 徒歩1分))
- [R&D]脳波計測 実験テクニカルスタッフ(アルバイト)(東京都千代田区(秋葉原駅 徒歩1分))
- 短時間一般職(脳機能解析研究室・脳波計測の実験と解析の支援)(兵庫県神戸市西区岩岡町(未来ICT研究所))
- 有期研究員(脳機能解析研究室・可搬型脳波計と脳機能解析の応用)(兵庫県神戸市西区岩岡町(未来ICT研究所))
- 特任助教または特任研究員(Chao 研究室・高齢者の脳の健康と脳波)(東京都文京区(東京大学本郷キャンパス))
- 〖つくば勤務|研究インターン〗非侵襲BCIの人対象実験・データ取得オペレーション(茨城県つくば市)
- ソフトウェアエンジニア(BMI 医療機器)(東京都(広尾本社))
職種ごとの仕事の中身はBCI・脳科学の仕事と就職先で確かめられます。
出典と確かめた日
この記事の値段・仕様・判定は、2026年11月5日に各社の公式のページ・文書と、国・PMDA の資料を開いて確かめました。機種ごとの出典は、表のリンクにあります。
- 決まり: 厚生労働省 プログラムの医療機器該当性に関するガイドライン・PMDA 医療機器 情報検索・長野県 医療機器の分類・FDA General Wellness・総務省 電波法の改正の概要・規制改革の会議の資料
- メーカー: Muse・Muse 開発者・Emotiv・Emotiv 開発者・OpenBCI・OpenBCI 文書・Neurable・Neurable 利用規約・VIE・NeuroSky・NeuroSky サポート・ミユキ技研
確かめられなかったこと: Muse の製品ページは何度開いても混雑の応答で開けず(Muse 2 と Muse S を取次の対象にした根拠は、国内の正規販売代理店の明記とメーカーのサイト共通の注記)、Muse 2 の仕様・値段は公式ページの文言を検索の結果で確かめました。Muse S(Gen 2)の公式の値段、Muse S Athena の電極の種類、Emotiv MN8 のサンプリング周波数、Neurable の SDK の名前と対応言語、NeuroSky の乾式の明記、Muse S 以外の機種の技適の番号は確かめられませんでした。Emotiv と OpenBCI は、同じ機種で公式のページどうしの値段が食い違っています。PMDA の検索は届出・認証の全件の台帳ではありません。



